フラッディングとは、英語で書くとfloodingと書き、洪水をおこすとか氾濫させるという意味です。
文字通り故意に自分が不安だと思っていることを起こし、その様子を観察することで、自分の思い違い、つまり現実と認知のずれを把握するというもので、人によっては、「暴露療法」とよんだり、「端で攻撃する練習法」(フィーリングハンドブック デビットDバーンズ 星和書店 P371)などとよばれています。ショック療法的な要素が大きいです。なんせ毒をもって毒を制するわけですから。ですが、真剣に取り組みさえすれば、効果は絶大です。嫌な記憶が置き換わっていき、心象風景やセルフイメージも変革していきます。人によってはいままで苦手だったことが好きになり、帰って興味をもったり、好奇心がわいてワクワクしたりするレベルまで行く人もいます。
フラッディングのポイントは・・・
1.不安や恥、極度の緊張を感じる場面を書き出す
2.その場面を現実社会で追体験できるシチュエーションを作り出し、始まったら逃げられないようにする。
※安全を考えて、1人オブザーバーを付け、まずい状況になった場合に支援できるようにしておくことをお勧めします。
3.その不安や緊張を最後まで追体験する。
4.終わったら、感じたこと、気づいたことを書き出す。
5.これを数回繰り返す。
例)ニューヨークのキャスターをしているスティーブは極度の内気で、遺伝性の手が震える症状をもっていました。スティーブはこの震えがプロデューサーにばれることで、キャスター生命が経たれてしまうことを恐れていました。しかし、かれはそれを隠すのがとても上手で、周囲の人間はだれもそれに気づいていませんでした。
クライアントの問題点:1)誰かが手の震えを発見したら、とてもまずい状況になる。2)どこかおかしいところがあると思われる、3)これは屈辱的だ。 この3つの考えが間違っている。
課題:おしゃれなブティックにおしゃれな男女の客がいるとき、高価な商品をクレジットカードで買うこと。手が震えたら大声で「私の手が揺れて、震えている、何たることだ!」ということ。そして請求書をやぶり再度サインをするようにすること。その後お水をもらうこと。水が震えで揺れたら大声で「私の手はまだ震えている!」ということ。
課題のポイント:カードで買うとサインを要求される。その時手が震える。周りはどう見るか?お水をもらうと手が震えれば水が揺れる。周りはどう見るか?
結果:サインする間、スティーブはパニック状態ではあったが、震える手に気を取られている人はいなかった事実を体験したことを知る。
(出典:フィーリングハンドブック デビットDバーンズ 星和書店 P371~3 著者が要約しています)
例)極度に会社内のプレゼンテーションで緊張するという人
クライアントの問題点:1)自分は完璧にこなさなければならない。2)声の震え、自身のなさ、内容そのものの落ち度などあってはならない。3)取り返しがつかななくなる この3つの考えの間違い。
課題:あまり重要でないMTGなどで、5秒ぐらいなにもいわないで黙ってみる。声を意図的に震わせて、ときどき高い声を出してみる。資料をガサガサやって段取りで混乱しているふりを演じてみる。内容のないことをしゃべってみる。
課題のポイント:いずれも、ぎくしゃくしているプレゼンをすると周りはどういう反応をするのか見てみる?
結果:当然やったことがないことを、しかも人前でやる恥ずかしさや緊張はあった。しかし、ダメな人間だといか能力がないというように受け捉えた人はいなかった。あとからどうしたのと心配するひともいたが、それは体調を心配してくれてのことで能力に対してではなかった。笑うひともいたが、それはからかったり、失望したりではなく、親しみを感じたうえでの、親しいコミュニケーションをかえてしてきただけだった。
エクスポージャー法というものもあります。こちらはフラッデングと基本は同じですが、弱い不安から徐々に強度を上げていく点で異なります。たとえば、本番環境さながらのテスト環境をつくってロールプレイングから始めるのも、こちらに入ります。